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2024年のRWAを牽引したSecuritizeの日本市場での活動と展望(前編)

2024年、RWA(Real World Assets)やセキュリティトークン(ST)(以下まとめて、デジタル証券)の領域で世界中の注目を集めたBlackRock社のトークン化ファンド「BUIDL」。

BUIDLは、伝統的な金融商品をパブリックブロックチェーンに展開し、ローンチ後1ヶ月あまりで運用資産総額5億ドルを突破、世界最大のトークン化ファンドとなりグローバル市場に大きな影響を与えました。

このBUIDLの技術を支えるのは、Securitizeです。世界をリードするトークン化技術を持つSecuritizeが、日本市場ではどのような取り組みをしているのか、ご存知でしょうか?

2024年に世界中で知名度が向上したSecuritizeですが、これまで日本国内ではPRよりも案件の実行に注力してきたこともあり、国内事例についてはあまり知られていないかもしれません。

実は、Securitizeは米国企業ながら2019年末から日本で活動しており、多数の実績を誇っています。

余談ですが、Securitizeの日本法人であるSecuritize Japanは、日本でブロックチェーンコンサル/開発を行っていた「株式会社BUIDL」を買収した形で発足しています。株式会社BUIDL時代から所属していた私からすると、BlackRock社のBUIDLというネーミングは衝撃的でした(笑)※偶然です

本記事では、前編として、Securitizeが日本市場で進める取り組みとSecuritizeプラットフォームの特徴を紹介し、次回後編では、グローバル事例が示す未来に日本がどう応えるべきかを考察します。

1. 日本市場の現状とSecuritizeの実績

日本市場におけるデジタル証券の多くは、現状では伝統的な金融サービス/システム、いわゆるTradFiの延長線上にあります。(これを否定するつもりはありません)
2020年の金商法改正によってデジタル証券の取扱が法的に定められ、これを契機に大手金融機関を中心にデジタル証券に関する取り組みが開始しました。これまでの多くの事例が不動産案件であり、プライベートチェーンを活用する形で進められてきました。

Securitizeも、同様にこの日本市場での活動を進めてきましたが、私たちは、新たな可能性を切り拓くことに注力しています。

日本市場では、「デジタル証券=不動産」というイメージが強く、事例も不動産に集中しています。法的整理や既存の金融商品との差別化等を踏まえ、ビジネス化しやすい形を確立できたのが不動産だったのかと思いますが、ここまで不動産に偏っているのは日本固有の状況とも言えます。

Boostry社による公開データ(https://boostry.co.jp/st-data)によると、調達金額ベースで約90%、案件数ベースで約75%が不動産関連ということが分かります。

一方、このデータからも、Securitizeが独自ポジションを築いていることが分かります。

特に特徴的なのは、不動産以外の商品を多く手がけている点、証券会社を介さない販売チャネルを積極的に切り開いている点、そして、上記公開データには含まれませんが、デジタル証券としての形式に限定されず、特典付与による商品性の拡張や、不動産クラウドファンディングへの活用等に取り組んでいる点と言えます。

チャレンジングな案件が多いため発行額は控えめですが、様々な領域での実績を積み重ねた結果、商品スキームや販売チャネルの種類に関して、国内No.1のカバー範囲になっています。

また、Securitizeは事業開始当初からSaaS型でのサービス提供という形態になっているため、国内初となる事例を多数行っている一方で横展開が容易というのも強みと言えるでしょう。

事例の一部をご紹介します。

  • 丸井グループの自己募集型デジタル社債 (2022年〜):
    事業会社である丸井グループ自らが、自社HPやスマホアプリ経由でクレジットカード保有者向けに「自己募集」で社債販売を実施しました。
    自社の顧客に直接訴求する形で、従来証券会社経由では難しかった、投資家情報の把握や、利子としてポイントを付与することによる商品の魅力向上が可能になりました。発行体・投資家の双方に良い、新しい資金調達モデルを構築したと言えます。
    国内唯一の自己募集型デジタル社債の事例ながら、既に4回の発行を終えており(うち3回は償還済)、毎回10〜20倍の応募が殺到する人気案件となっています。
    参照:https://www.0101maruigroup.co....
  • ソニー銀行と三井住友信託銀行の合同金銭信託 (2023年〜):
    銀行による、銀行口座保有者に向けたデジタル証券販売の国内唯一の事例です。
    既存の顧客基盤への新しい商品展開を可能にしました。証券会社だけでなく、銀行による販売が加わることでデジタル証券の可能性が広がったと言えるでしょう。既に2回の発行を終えています。(うち1回は償還済)
    2回目は米ドル建てで販売しており、国内初の外貨建STとなりました。
    参照:https://moneykit.net/visitor/d...
  • 映画ST(映画宝島)(2024年〜):
    証券会社経由での一般投資家による映画制作委員会への出資という、エンターテインメント業界における新たな資金調達の形を提供しました。投資特典もファンには魅力的なものが多くあり、資金調達 x ファンマーケティングという新たな領域を切り開く事例となりました。
    参照:https://www.phillip.co.jp/info...
  • カゴメ・JR西日本の特典付き社債(非デジタル証券)(2023年〜):
    社債購入者に野菜ジュースやポイント、割引券等、投資体験に特典を付加することで、投資家との新たな接点を構築しました。デジタル証券ではない形の既存金融の枠内でも革新的な付加価値を生み出していると言えるでしょう。
    参照:https://www.rakuten-sec.co.jp/...
    参照:https://www.rakuten-sec.co.jp/...
  • LIFULL InvestmentやLimbs Capitalの不動産クラウドファンディング (2023年〜):
    不動産クラウドファンディングとしての利用にも対応しています。発行体自らが募集する1号型に加え、仲介業者による募集となる2号型の双方に対応している数少ないプラットフォームとなっています。Limbs CapitalのBATSUNAGUでは継続的に案件が組成され、16号案件まで募集が行われています。
    参照:https://recrowdfunding.lifull....
    参照:https://batsunagu-funding.com/

2. Securitizeプラットフォームの特徴

このように多種多様な領域でSecuritizeプラットフォームが利用されるようになった背景は、Securitizeの長年実績を積み上げてきたプラットフォームの汎用性拡張性があります。

特に注目いただきたい特徴(差別化ポイント)は以下の通りです。

  • エンドtoエンドのサービス提供:
    トークンを発行管理できるだけでは金融サービスを提供することはできません。Securitizeは、投資家向けの申込画面やポートフォリオ管理画面にはじまり、抽選や税金計算、各種帳票作成・交付、償還までを一貫してサポートする管理者向け画面までをサービスとして提供しています。正直、トークン発行管理以外の機能の方がボリュームとしては大きいです。
    このようにオールインワンでのサービス提供を実現したことにより、非金融機関の事業会社による自己募集等にも対応可能になっています。
    トークン化以外の機能も豊富なため、非デジタル証券の領域として、カゴメやJR西日本のような特典付与の部分を活用する事例や、不動産クラウドファンディングとして販売管理機能の利用等、幅広い領域でSaaSとして効率的なシステム導入を実現しています。
  • プライベートチェーンとパブリックチェーンの双方に対応:
    国内の現状に合わせたプライベートチェーン対応に加え、Ethereumをはじめとした複数のパブリックチェーン(Aptos/Arbitrum/Avalanche/OP mainnet/Polygon等)をサポートしています。案件ごとに最適なチェーンを選択し、そのチェーン上にトークンを発行することが可能です。
    これにより、最初はプライベートチェーンで利用を開始し、次回案件からパブリックブロックチェーンを利用する等の拡張性がいつでも提供可能になっています。
    (残念ながら、国内ではまだQuorumしか使われていません・・・)
  • 柔軟なチャネル活用:
    サービスの全体を利用するだけではなく、部分的に利用することも可能で、企業のニーズに合わせた柔軟な導入が可能です。これにより、自己募集、銀行販売、証券販売など、多様なチャネルでの展開を実現しています。
    例えば、証券会社販売型では、販売結果を連携し、トークン発行管理機能のみを使用する形となります。


詳細は割愛しますが、サービスの全体像を図示すると以下のようになります。
(プライマリマーケットやセカンダリーマケットはライセンスの関係上日本での提供は行っておりません)


3. 前編のまとめ

本記事では、Securitizeが日本市場で積み上げてきた実績と、その背景にある汎用性と拡張性を備えたプラットフォームの特徴についてご紹介しました。Securitizeは日本国内のTradFiでの活動を通じて、市場の信頼性を確保しながら、これまでにない価値を生み出してきました。

後編では、日本市場で生み出してきた価値を深掘りし、グローバルとのギャップとそこに対するSecuritizeのアプローチについて、さらに詳しくお伝えします。

*本ブログは、Securitizeに在籍する森田が執筆したものであり、一部に個人の意見や見解が含まれています。そのため、記載されている内容が会社としての公式見解を必ずしも反映しているわけではないことをご了承ください。

森田 悟史プロフィール:
2010年NTTデータ入社。インターネットバンキングやオープンAPIなど大手銀行向けのシステム開発に従事。2018年からブロックチェーン技術の専門企業BUIDLに初期メンバーとして参画し、約1年間で10件以上のブロックチェーンを用いたコンサル/受託開発プロジェクトを大手企業向けに実施。2019年末のSecuritize-BUIDLの包括資本提携を経て、Securitizeの日本展開を推進中。

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